子どもにチャットGPTを使わせていませんか?
ここ数年、AIの進化は目覚ましく、チャットGPTをはじめとする生成AIが私たちの生活に浸透しています。まるで人間と会話するような自然な対話ができるAIに、多くの保護者が「子どもの学習に役立つかもしれない」と期待を寄せています。
しかし、ちょっと待ってください。現在私たちが手軽に利用できる生成AIの多くは、実は大人向けに設計されたものです。OpenAI社も、チャットGPTの利用は原則18歳以上、13歳から17歳までは保護者の同意が必要と定めています。これは、これらのAIが小さな子どもの無条件利用を想定していないことを示しています。
では、なぜ大人にとって便利なAIが、子どもには注意が必要なのでしょうか?そこには、子どもの発達段階を考慮すると見過ごせない3つの重大なリスクが潜んでいるのです。
リスク1:不適切なコンテンツとの遭遇
生成AIは、インターネット上の膨大なテキストデータを学習して応答を生成します。そのデータには、ニュース記事や学術論文のような有益な情報もあれば、暴力的表現、差別的内容、性的情報など、子どもの健全な発達に有害なコンテンツも含まれています。
AI開発企業もフィルタリング機能を導入していますが、完璧ではありません。単純な禁止ワード設定では文脈によってすり抜けることがあり、巧妙な質問により、意図せず子どもが有害情報に触れるリスクはゼロではないのです。情報の取捨選択や危険回避の能力が十分発達していない子どもにとって、これは深刻な問題です。
リスク2:「考える力」が育たない思考停止への懸念
AIの最大の魅力は、質問に「即座に」答えを提示してくれることです。しかし、この便利さが子どもの学びには逆効果となる可能性があります。
本来、学びは分からないことにぶつかり、自分で調べ、試行錯誤し、時には間違いながら粘り強く考え抜くプロセスを経て深まるものです。「なぜだろう?」と考え、仮説を立て、情報を集め、分析し、自分なりの答えを導き出す。この思考プロセスこそが「考える力」を育む核心なのです。
ところが、AIに聞けばすぐ答えが出る状況に慣れてしまうと、子どもたちはこの貴重な思考経験を失ってしまいます。「難しい問題はAIに聞けばいい」という思考パターンが定着すると、自ら問いを立てる意欲や、困難な問題に粘り強く取り組む態度、批判的思考力などが育ちにくくなる恐れがあります。
リスク3:AIの嘘や間違いを信じ込む危険
生成AIは「ハルシネーション」と呼ばれる、事実に基づかないもっともらしい嘘やでっち上げ情報を生成することがあります。これは、学習データに誤った情報が含まれていたり、確率的に「それらしい」応答を生成する仕組みに起因します。
大人であれば、ある程度の知識と経験、批判的視点により「これは何かおかしい」と気づくことができます。しかし、知識や経験が浅く、批判的思考力も発達途上の子どもたちは、AIが生成した情報を無批判に信じ込んでしまう危険性が高いのです。
歴史上の出来事について間違った説明をされたり、科学的に不正確な情報を教えられた場合、子どもはそれを正しい知識として吸収してしまうかもしれません。AIは一見非常に賢く、自信満々に答えるため、子どもにとってそれが嘘や間違いであることを見抜くのは極めて困難です。
AI時代を生きる子どもの「考える力」を育むために
このように、大人向けAIを十分な配慮なく子どもに使わせることには、見過ごせない危険が存在します。しかし、AIを完全に遠ざけることは現実的ではありません。重要なのは、子ども向けに特別に設計されたAIを選び、適切なルールとリテラシー教育の下で活用することです。
子どもたちの安全と「考える力」を最優先に考えたAIとの付き合い方を模索し、AI時代を生き抜く真の力を育んでいくことが、今私たち大人に求められているのです。